前回は「見る仕組み」について解説しましたが、今回はもっと深く「見える仕組み」を解説します。
光を感じれば「見る」ことは出来ますが、目の中はいつも同じ状態ではなく四六時中「見える」工夫をしています。
[table of contents]
1. 「見える努力」・ピント調節とは?
2. 「見える努力」・マイクロサッカードとは?
3. 「見える」まであと一歩!網膜から脳までの信号とは?
4. 「見える」要件が揃った!心因性視力とは?
5. 「見える努力」まとめ
「見える努力」・ピント調節とは?
ピント調節って何?
「虫めがねを持つ手」を前後させて紙に焦点を合わせますよね?
目の中でも常に「光を感じる細胞」に焦点を合わせています。
遠くに焦点を合わせる機能が働かないものを仮性近視、
近くに焦点を合わせる機能が衰えたものを老眼と言います。
仮性近視も老眼も別の記事で紹介しますが、要するに力が及ばないけど「見える工夫をしている」ことが分かるのです。
では「見える工夫」が及ぶ人について説明します。
遠くを見るときに目の中の焦点が「光を感じる細胞」に合っている人が基準になります。
これを「遠くにピントが合っている人」と定義します。これは虫めがねで作った焦点が紙の上にあっている状態と同じです。

遠くにピントが合っている人は、近くを見ると目の中では焦点がズレます。

目の中で何も反応がなければイメージ2のようにピントがずれて近くが見えません。
しかし、実際には「見える工夫」をするので近くも見えます。
これを虫めがねと焦点に置き換えると、次のように言えます。
5cmの所で焦点が合っている虫めがねと紙の距離は3cmにしても7cmにしても焦点がズレます。
今回は3cmに近づけてみます。
近づけたことで合わなくなった焦点を合わせるためにはどうすれば良いと思いますか?
5cmにすれば焦点が合うので、今回は3cmのままですよ。
もし、虫めがねの厚みを自動的に変えることが出来れば、3cmでも焦点を合わせることができます。
これと同じことが目の中で起こるのです。
目の中の水晶体と言うレンズの厚みが反射的に変わって焦点を合わせます。
これをピント調節と言います。
だから、近くを見ることが可能になります。
近くも遠くもよく見える人の目の中はいつも反射的に水晶体の厚みが変わっている=見える工夫をしているから見えるのです。
関係性を示すと次のようになります。
太陽=見ているもの
白い紙=「光を感じ細胞(網膜)」
虫めがね=水晶体
光が目の中に届いて網膜に辿り着くまでに2枚のレンズを通過します。
それが角膜と水晶体ですが、角膜の厚みは一定なので水晶体のピント調節と呼ばれる役割が重要です。
「見える努力」・マイクロサッカードとは?
マイクロサッカードって何?
人間は「見える」工夫をもう1つ無意識にしています。
確証はありませんが、「人間は」と言うより「目のある生き物全て」かもしれません。
光源から「光を感じる細胞」までの光の経過を物理的経過と言います。
「光を感じる細胞」が映像を解析する過程を生理的過程と呼びます。
「光を感じる細胞」の解析能力には目の運動が欠かせません。
マイクロサッカード(固視微動)と呼ばれるものです。
何かを見る時は目玉が止まっていると思われがちです。
でも実際には小刻みに動いていて、もし動いていなければ見ているものが消えてしまうと言われています。
つまり、目を動かす事で光の刺激を与えていると考えられています。
目を小刻みに動かして「見える」ように努力をしているのです。
「見える」まであと一歩 !網膜から脳までの信号とは?
網膜から脳までの12本の信号
ここからはさらに複雑です。
サーカードによって受けた刺激は12の動画に分類されます。
次の引用をご覧下さい。
網膜の奥に存在する神経細胞(ニューロン)が、目に映った光景を12本の別々なビデオトラック(動画)として脳へと投射していることがわかった(トラックとは重ね合わせたり、個別に映すもので、例えばDVDの場合、ビデオトラックの他に音声トラックや字幕トラックなどがある)。つまり視覚世界を12の抽出表現にしているのだ。個々のトラックは、外の光景を1つの側目から見た場合の抽出表現で、これを網膜は絶え間なく更新して脳へと送り込む。例えばあるトラックは、対象物の輪郭のみを詳しく記した動画のような像を運ぶ。別のトラックは特定方向への動きに関する情報を伝える。また陰影に関するトラックや、運んでいる表現内容の分類が難しいトラックもある。参考:日経サイエンス2007年07「網膜が生み出す12の動画」
目の奥に映った画像を丸ごと信号として送るのではなく12本の信号に別けて送ります。
12本全て揃って初めてまともな画像として認識できるのです。
トムクルーズをはじめとする多くのハリウッド俳優が抱えている、文字を理解することが困難なディスレクシア(失読症)と言う病気がありますが、もしかするとこの12の抽出機能がうまく働いていない可能性があるかもしれませんね。
「見える」要件が揃った!心因性視力
心因性視力障害とは?
やっと脳まで信号が届きました。
しかしこれで見えると思ったら大間違いです!
信号がまともに届いても「見えない」人が世の中にはいます。
それが、精神的な過程です。
見えているのに心理的要因によって「見えない」のです。
これを心因性視力障害と言います。
主にお子さんに多く、視力が出にくいと感じた場合はちょっとトリッキーな視力検査をします。
まったく度数の入っていないレンズをいれると、「度数が入って見える」と言う思い込みによって視力が上昇する場合があります。
「見えないと思えば見えない」し「見えると思えば見える」本当に不思議です。
「見える努力」まとめ
まとめ
如何でしたか?
2回にわたって「見る」仕組み「見える」仕組みをお伝えしました。
見るためには「見える努力」をしないといけません。
それがピント調節でありマイクロサッカードです。
そして「光を感じる細胞」=網膜から分解された12本の信号を全て感じ取る必要があり、「見えると言う思い込み」も必要です。
あなたが見て情報を得ることができるのは、ここで解説した機能が全て正常に働いているおかげなのです。
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