目は酸素の要らない組織、有酸素運動ではなく無酸素運動だ!
夜行性のウサギは有酸素運動、人間の目は無酸素運動
角膜は呼吸をしていません。
この話はにわかに信じ難いかもしれません。
信じられない理由は2つあります。
日本全国の眼科医の知識の大元である日本眼科学会が全く逆のことを言っている事実と、真実を理解するために必要な知識が難しいからです。
たとえば、ミトコンドリアが存在しないからです、と言われてもピンとこないでしょう。
角膜にミトコンドリアが存在しない事は証明されていて、最近は生化学の参考書にも掲載されています。
ミトコンドリアの存在は細胞の酸素利用と同じ意味です。
酸素を利用することは老化をしていくことにつながります。
角膜は何歳になっても艶があり透明です(これは鍔井先生の言葉ですが、全くその通りです)。
実に不思議ではありませんか?
同じように透明な水晶体は老化し濁るのですから。
それは角膜に酸素消去システムがあるからに他なりません。
ではどのように酸素が消去されるのか?
今回は鍔井先生が解明されたMOR-GPxシステムを紹介します。
これは日本眼科学会が採用しているウサギの角膜とは全く違う代謝をするウシやヒトの角膜の話です。
はっきり言って難しいと思いますので分からない方は、
ウサギの角膜は有酸素運動で代謝をし、ウシやヒトの角膜は無酸素運動をする
ここだけ覚えておいてもらって、まとめを眺めるだけでも充分ですからね。
ヒトの目は無酸素運動のペントーストリン酸回路でエネルギーを取り出す
まずペントースリン酸回路と言う糖の代謝経路があります。
この回路ではグルコース6リン酸と言う糖質と大量の水分子とNADPと呼ばれる酸化型の補酵素を使って二酸化炭素を作り、NADPHと言う還元型の補酵素に変えます。
つまりこの回路では酸素を必要とせず二酸化炭素が出てきます。
因みに酸化とは
1、酸素がくっ付く
2、電子が奪われる
3、水素が離れる
のうちいずれかの反応を
逆に還元とは
4、酸素が離れる
5、電子がくっ付く
6、水素がくっ付く
のうちいずれかの反応を言います。
補酵素のNADPにHがついてNADPHになっていますね。
水素(又は電子)がくっ付いたことを表し、還元型になったことを意味します。
このNADPHは核酸や脂肪酸の材料として利用されるだけでなく、酸化した物質に水素を渡す生体還元剤として働きます。
(物質から酸素を切り離すことだけが還元なのではなく水素がくっ付くことも還元なのです)
NADPHの水素は酸素にも渡されます。
まず2つの水素をくっ付くて過酸化水素にします。
O2+H2→H2O2
NADPHは水素がなくなり酸化しNADPになりますが、再びペントースリン酸回路で水素を与えられNADPHに変身します。
過酸化水素のその後はグルタチオンペルオキシターゼ(GPx)と言う酵素が、還元型つまり水素をもったグルタチオンと言う物質を使って過酸化水素に水素を渡して水分子に変換します。
H2O2+2GSH→2H2O+GSSG
矢印の左辺は過酸化水素+2分子の水素をもった還元型グルタチオン(過酸化水素とグルタチオンの間の水素を移動させるのがGPx)
矢印の右辺は2分子の水+水素を奪われた酸化型グルタチオン
これで酸素は消去されました。
なお酸化したグルタチオンはNADPHによって水素を与えられ還元型に再生します。
つまりNADPHが酸素に水素を渡す、酸化した物質にも水素を渡すと言う役目を果たし、ペントースリン酸回路がそのバックアップをしているのです。
ペントースリン酸回路では水分子に含まれる水素をNADPに渡し、水分子に含まれる酸素は糖質に含まれる炭素にくっ付くけて二酸化炭素が排出されます。
鍔井先生が解明されたこの一連の作業によって酸素が消され二酸化炭素がでてくる訳ですが、酸素を吸収し二酸化炭素を排出するミトコンドリアが行う呼吸と誤った解釈がされ、角膜上皮は呼吸していると勘違いされてきたのです。
以外は反応式を表した図(画像引用元)
まとめ・酸素の移動だけでなく水素の移動も含めたものを酸化還元反応を言う。
・水素がくっついた物質は還元された物質である。
・水素が離れた物質は酸化された物質である。
・NADPと呼ばれる水素の運び屋が水素を移動させる
・NADPが水素を奪った相手は酸化物質となり自らは水素がくっついているので還元物質になる。
・還元物質になる事でNADPHと名前を新たにする。
・グルコース(炭素と水素と酸素の化合物)と水分子(水素)から運び屋が水素を奪って入ってきた酸素に移動させる事で二酸化炭素(酸素と炭素)と水(酸素と水素)を作り出す。
・この流れは一見酸素を吸収し二酸化炭素を排出するよう見える。
・しかしミトコンドリアのない組織なので呼吸ではない。
・このNADPH⇄NADPの反応をバックアップしているのがペントースリン酸回路である。
次回に続く、