時々テレビでも取り上げられる加齢黄斑変性。
歳を取ると全員なるの?
どんな症状が出るの?
なりやすい人はいるの?
やっぱり手術するんですか?
今回はそんな黄斑変性についてどこよりも分かりやすく解説しようかと思います。
加齢黄斑変性とは?
黄斑が変性って?
加齢黄斑変性は白内障のように歳を取ったら誰でもなると言う病気ではありません。
ただし、加齢によって誰にでも起こる可能性のある病気ではあります。
では黄斑変性の黄斑って何なのでしょうか?
私たちの目は光を受信する事で、物の色や形、大きさ、距離などの情報を認識することができます。
映画館で映画を見る時にスクリーンにピントを合わせる事で綺麗な画像で鑑賞が可能です。
このスクリーンに相当するのが眼底にある網膜と呼ばれる組織です。
網膜には光を感知するための視細胞と言う細胞があります。
人は受信器である視細胞が光の情報を読み取る事で色や形、大きさなどを認識しています。
正面から眼底をのぞいた時のほぼ中央部に位置するのが黄斑という場所です。
視細胞は黄斑部に集中しており、ここが障害されると視力に大きな影響が出ます。
黄斑変性とは黄斑部の性質が異常なモノへ変化した状態というわけです。
黄斑変性は物が歪んで見えたり視界に暗点があったりなどの視力の低下やを引き起こします。
加齢黄斑変性の種類は?
黄斑変性の種類
黄斑変性にはドライタイプとウェットタイプの2種類があります。
ドライタイプ
ドライタイプは萎縮型(いしゅくがた)と呼ばれ老廃物が溜まる事で網膜の下にある網膜色素上皮細胞が萎縮してくると言われています。
萎縮とはだんだん小さく縮んで機能しなくなる事で、容積自体が減る場合と数が減る場合があります。
進行は穏やかで黄斑の中心が萎縮しないと視力に影響しない場合もありますが、ウェットタイプに移行する場合もあるので定期的な検査が必要になります。
ウェットタイプ
ウェットタイプは滲出型(しんしゅつがた)と呼ばれます。
網膜色素上皮細胞(もうまくしきそじょうひさいぼう)のさらに下の層である脈略膜(みゃくりゃくまく)から小さく細い血管が伸びてきます。
血管が伸びるのは栄養不足や酸素不足の場所を目指して血管が新しく作られるという説明がされています。
この血管は血液中の成分が漏れやすいので網膜が浮腫みやすく、また脆い(もろい)ので血管が破損し眼底出血を起こしやすいのです。
加齢黄斑変性の原因と対策は?
黄斑変性の原因と対策
原因がはっきりとしないとされながらも、いくつか原因として言われているのは、
喫煙、肥満、紫外線です。
日本眼科学会によると「喫煙している人はしていない人に比べて加齢黄斑変性になる危険性が高いことが分かっています。喫煙している人には禁煙が勧められます。」
と分かっていると書かれています。
アメリカでは黄斑変性が中途失明の1位になっていること、日本人の黄斑変性患者が増えている事から食の欧米化が関係しているのではないかとも言われますが、だとしたら肥満ではなく食の欧米化なのでは無いかと思います。
日本人の肥満が増えているなら原因は肥満も考えられますが、肥満とそうで無い人の黄斑変性罹患の割合を調べたデータがないのではっきりとは分かりません。
また、食事に含まれる悪玉コレステロールが増える事が要因とも言われるので、先程紹介した溜まる老廃物とは低比重リポタンパク(LDL)の代謝に関係する物質の事なのでは無いかと思われます。
そして、紫外線は白内障の原因とも言われますが、加齢黄斑変性でも原因に挙げられています。
紫外線は活性酸素を発生させる酸化ストレスの原因なので、抗酸化作用のある食べ物やサプリが勧められています。
ここから導き出される対策は喫煙と高脂肪食をやめる事、紫外線カット対策という事になりますね。
加齢黄変変性の治療法は?
黄斑変性の治療法
大きくレーザ治療と手術、注射があります。
レーザーを使って新生血管のある場所を焼いてしまう方法がレーザ光凝固術になります。

画像引用元:関西電力病院
光凝固術の中でも光線力学的療法(PDT)というのもがありますが、これはレーザーと薬剤を使った合わせ技です。
薬剤を静脈に注射してその後薬剤が新生血管内に到達したことを確認し、そこにレーザーを当てる事で活性酸素を発生させ、血管を閉じさせると言うモノです。

画像引用元:関西電力病院
薬剤は全身にも循環しますので、注射後一定期間は直射日光などの強い光に当たると、皮膚にやけどの様な副作用が生じることがあります。しかし、薬剤は強い光に当たらなければ害はありません。ただ治療後48時間は直射日光や強い光に当たってはいけませんので、初回治療の場合は2-3泊の入院が義務づけられています。退院後も治療後5日間、直射日光はできるだけ避けていただく必要があります。費用は1回の治療で3割負担の場合、約13から15万円かかります。

画像引用元:関西電力病院
注射は眼球に直接打ちます。
内皮細胞増殖因子と言う物が血管を新たに増設したりむくみの原因になると考えられているので、増殖因子を抑えるのが目的です。
1ヶ月に1本を3回を1クール、つまり3ヶ月繰り返して一度の治療が終わります。
その後は様子を見ながら必要に応じて注射をします。
費用は薬剤と負担額にもよりますが、3割の負担で1回につき4〜5万かかります。
一般的に言って、黄斑変性の治療は完治させるものではなくそれ以上悪くならないようにするために行われます。
黄斑変性のiPs細胞治療とまとめ!
iPs細胞への期待とまとめ
iPs細胞の加齢黄斑変性に関する研究では京都大学iPS細胞研究所CiRA(サイラ)が公開する2017年3月26日付ニュースにおおよそ以下の様な内容の記事があります。
京都大学PS細胞研究所の山中伸弥所長、理化学研究所(理研)多細胞システム形成研究センター網膜再生医療研究開発プロジェクトの髙橋政代プロジェクトリーダー、先端医療振興財団先端医療センター病院の栗本康夫眼科統括部長の共同研究グループが世界初のiPS細胞を用いた臨床研究を2013年より行い、iPS細胞由来網膜色素上皮細胞を用いた細胞治療が安全に施行できることを支持する結果を得た。
と言ったものです。
滲出型加齢黄斑変性患者の皮膚の細胞よりiPS細胞を誘導し、さらに網膜色素上皮細胞(RPE)を分化してシートを作製し、 新生血管の抜去後にその自己iPS細胞由来網膜色素上皮細胞シート(iPS-RPEシート)を網膜に移植した。

2014年9月に患者(女性)に移植を実施したところ、1年後の評価において、腫瘍形成、拒絶など認めず、新生血管の再発もみられなかった。
また、移植手術前の視力を維持しており、安全性試験としての経過は良好でさらに、その後1年半経過した現在も、腫瘍形成や拒絶反応はみられていない。
移植手術前の視力がどの程度なのか分かりませんが、2年経過した2016年9月の段階では視力低下はなく大きな副反応も無いようです。
手術前の視力を維持しているということは悪くなってないが良くもなっていないと言うことです。
つまり、視力0.1の人は0.1のままということです。
読者の中には意味があるのかと思う方もきっといるでしょう。
この様な手術を受けられる患者さんは何をしても効果が期待できず、高い治療費を払い続けて、失明に怯え続けるしか無い人の中から選ばれているわけです。
そんな患者さんにとってみれば大変意味のある、必要な技術である事には変わりないでしょう。
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